「信託銀行」という言葉は聞いたことあっても、具体的に何をしている銀行か説明できる人は、少ないと思います。信託銀行は、普通の銀行とは何が違うのでしょうか?
今回は信託銀行の業務内容や、サービスについて分かりやすく解説します。
目次
信託銀行って何?
信託銀行とは?
普通銀行が取り扱う業務には預金や貸金業務などがあり、それらは「銀行業務」と呼ばれています。信託銀行とは、銀行業務に加えて「信託業務」・「併営業務」を取り扱う銀行のことです。
信託銀行の業務内容については、「信託銀行の業務内容は?他の金融機関との違いは?」で詳しく解説します。なお信託銀行も、銀行と同じく「銀行法」に基づいて運営されています。
<外部の関連サイト>:信託銀行とは? | 信託協会
「信託」ってどういうこと?
そもそも「信託」とは何でしょうか?広辞苑には、「信用して委託すること。他人をして、一定の目的に従い財産の管理・処分をさせるため、その者に財産権を移すこと。」とあります。
<外部の関連サイト>:「信託」の検索結果 | 広辞苑無料検索
すなわち信託銀行における信託とは、「自分の持つ財産を信託銀行などに託し、管理や運用をしてもらうこと」を指します。金融における信託は、以下の三者から成り立っています。
信託は以下の三者から成り立つ |
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まず委託者が、信託の目的や、受益者を誰にするか決めて、受託者に財産を信託します。受託者は信託された財産を、委託者の目的に沿って管理・運用し、生じた利益を受益者に交付します。
委託者と受益者は、個人はもちろん法人でも可能で、受益者を委託者自身に設定することも可能です。
信託の機能と特徴
信託には以下の2つの機能があります。
・倒産隔離機能
・財産管理機能
「倒産隔離機能」とは、信託された財産は安全に管理される機能です。信託された財産は、信託銀行名義になりますが、信託銀行自身の財産とは別に管理されます。
財産は委託者と受益者からも独立して管理されるため、委託者・受託者・受益者のどれかが倒産(破産)しても、影響を受けません。つまり依頼者からすれば、財産を信託することで、仮に依頼者が破産することになっても、その財産は守られることになります。
「財産管理機能」とは、財産の管理を専門家に任せる機能です。受託者の管理・運用に関しては、信託法や信託業法によって、厳しい義務規定が定められています。
信託銀行等の専門家が、豊富な経験と知識を生かして、信託された財産を安全に管理します。
<外部の関連サイト>:信託業法 | 電子政府の総合窓口
現在、どんな信託銀行がある?
銀行名 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | 社員数(人) |
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三井住友信託銀行 | 12,446 | 1,131 | 13,469 |
三菱UFJ信託銀行 | 7,582 | 1,143 | 6,457 |
みずほ信託銀行 | 2,373 | 453 | 3,415 |
SMBC信託銀行 | 399 | -41 | 2,091 |
野村信託銀行 | 265 | 17 | 457 |
<出典>:信託銀行 売上高のランキング 1~10位(業績・動向・現状)|転職ステーション(ほか、各銀行の会社概要を参考にした)
表は日本国内の、代表的な信託銀行のデータです。(2017年時点、従業員数は2019年3月)三井住友信託銀行が、国内で最大規模を誇っています。
企業年金受託件数や、年金総幹事件数で信託銀行1位、資産運用残高は国内金融機関で1位など、信託銀行のみならず、普通銀行に較べても、大きな存在感を見せています。
<外部の関連サイト>:三井住友トラスト・ホールディングス 会社説明会
三菱UFJ信託銀行は国内二番手ですが、近年アメリカなど海外での影響力を高めています。三番手のみずほ信託銀行は、特に不動産分野で強さを見せています。
上の表から分かる通り、2位から4位の信託銀行の上位行はメガバンクのグループ傘下にあります。
<関連記事>:信用金庫・信用組合とは?わかりやすく解説します!
信託銀行の業務内容は?他の金融機関との違いは?
信託銀行の業務内容
信託銀行には、主に以下の3つの業務があります。
信託銀行の主な業務 |
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銀行業務の中でも、預金業務はお金の預け入れ、貸出業務はお金の貸出に関する業務を指します。為替業務とは、振込や送金・口座振替など、支払いに関係する取引の取り扱い業務を指します。
ちなみに国内の支払い業務を「内国為替」、外国との支払業務を「外国為替」と呼びます。
「信託業務」とは、どんな仕事?
信託業務とは、個人や法人から信託された財産を、信託銀行が受託者となって、管理・運用する業務をいいます。お金に限らず、株式などの有価証券や金銭債権、不動産のように、金銭的価値のあるものであれば何でも信託できます。
なじみの薄い株式交付信託のようなものから、結婚・子育て支援信託まで、いろいろな種類の信託があります。
併営業務とは、どんな仕事?
併営業務とは、銀行業務と信託業務に付随する業務をいいます。具体的には、不動産関連業務や証券代行業務、相続関連業務などがあり、扱う業務の範囲は各信託銀行ごとで異なります。
不動産に関しては売買だけでなく、鑑定も行っています。証券代行業務では、株式名簿の管理や株主総会の運営などを、企業に代わって信託銀行が担当します。
相続関連業務では、遺言書の保管や遺言執行、遺産管理などを扱っています。
信託銀行と普通銀行の違い
信託銀行と普通銀行の最大の違いは、信託銀行がより多くの業務をカバーしている点です。上で見た通り、信託銀行の業務は銀行業務を含めて3つありますが、普通銀行は銀行業務しか扱えません。
普通銀行が、信託業務や併営業務を行うことは法律で禁じられています。普通銀行の顧客は個人や法人ですが、信託銀行も個人だけでなく法人向けサービスを提供しています。
株主管理などを扱う証券代行業務や、企業の資産運用などがその例です。
一方で銀行としての規模は、普通銀行(特にメガバンク)が信託銀行を大きく上回ります。信託銀行の業界2位の三菱UFJ信託は、店舗数は48店舗しかありません(従業員数:6,457人)
<外部の関連サイト>:会社概要 | 三菱UFJ信託銀行
一方で、三菱UFJ信託と同じグループ会社である、メガバンクの三菱UFJ銀行は、国内だけで754店舗(従業員数:34,101人)の規模を誇ります。
<外部の関連サイト>:会社概要 | 三菱UFJ銀行
このように扱える業務内容の点では信託銀行の方が幅広いですが、銀行としての規模は普通銀行の方が大きいのが一般的です。
信託銀行が提供するサービス、利用するメリット
信託銀行が使われる理由
信託銀行が使われる最大の理由は、資産を一括で管理・運用してもらえることです。個人での資産管理は、複雑で手間がかかります。
信託銀行に依頼すれば資産管理を専門家に委託できるのに加え、委託者に合った運用プランを提案してくれるので、適切な資産管理を行えます。
また上で述べたように、信託銀行の併営業務の中には相続関連業務があります。これを目的に信託銀行を利用する人も多くいます。
信託銀行では遺言・遺産相続に必要な手続きを、一括して生前のうちに行うことができます。第三者である信託銀行にそれらを委託することで、兄弟間などでのトラブルを防ぎ、スムーズな遺産相続ができます。
信託銀行は、資産を管理する銀行という性質上、利用者には経営者や資産家が多いです。しかし少子高齢化に伴う社会保険制度への不安から、資産形成のニーズが高まっており、利用者の裾野は徐々に広がっています。
信託銀行で扱う個人向けサービス
信託銀行は業務領域が広く、多種多様なサービスを提供しています。個人向けサービスとして、例えば以下のものがあります。
信託銀行が提供する個人向けサービス |
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個人向けサービスでは、単なる資産運用にとどまらず、利用者のライフステージに応じたコンサルティングを行っています。若い世代へのサービスには、住宅ローンの提案や財産形成のための資金運用、教育資金に関する信託、結婚・子育て支援信託などがあります。
シニア世代に対しては、退職金の運用や、不動産信託、遺言信託といったサービスを展開しています。
法人向けサービス
個人だけでなく、以下のような法人向けサービスも提供しています。
信託銀行が提供する法人向けサービス |
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中でも取扱い規模が大きいのは、融資業務や証券代行・資産流動化の信託業務です。それらに加えて、資産運用や資産管理、人事制度・福利厚生の見直しの相談、株主や投資家への戦略検討なども行います。
その他にも年金資産の運用・管理など、企業が直面する様々な経営課題を解決するべく、幅広いサービスが用意されています。
また個人・法人向けサービスとは別に、公益・福祉のための信託もあります。学生への奨学金交付、自然環境の保全などを目的とした多くの公益信託が設定されています。
委託者が設定した目的に沿って、信託銀行が責任を持って資産運用をします。自分の資産を社会のために使いたいけれども、何をすべきかわからないという人にぴったりの信託です。
<関連記事>:ビジネスローンとは?借り入れで悩んでる中小企業は必見!
ここまで、信託銀行の業務内容やサービスについて見てきました。普通銀行と異なり、幅広いサービスを展開していることが理解できたかと思います。
資産運用や遺産管理などの機会があれば、ぜひ活用してみてください。
この記事のまとめ |
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