「個人間融資」という言葉を、ネットや新聞で見かけたことありませんか?
個人間融資とは文字通り、個人同士で行うお金の貸し借りを指します。
個人間でのやりとりなので、気軽にできそうな印象を持つ人もいるでしょう。
ですが実は、かなり大きなリスクをはらんでいます。
今回は個人間融資をキホンから解説し、個人間融資が持つリスクについて見ていきます。
個人間融資のキホンを分かりやすく解説
個人間融資って何?
上でも書いた通り、個人間融資とは個人同士のお金の取り引きを指します。
昨今はインターネットが普及したことにより、専用の掲示板やSNSを通じて個人間融資を利用する人が急増しています。
個人間融資のメリットは、取引相手に直接会う必要もなく、ネット上の取り引きだけでお金が手に入ることです。
消費者金融や銀行のような審査もなく、貸し手と借り手の合意さえあれば、誰でもお金を借りられます。
また貸し手からしても、超低金利の時代に高金利の貸出ができるので、一種の「資産運用」になります。
一方でデメリットは、取り引き相手の素性が知れないために安全性が低く、犯罪に巻き込まれる恐れがあることです。
また非常に高金利で、年率に換算すると100%を超える取引もザラにあります(利息制限法の上限金利は20%です)。
借りる側としてだけでなく、貸す側でも、個人間融資の利用は止めるべきです。
個人間融資のリスクについてより詳しくは、「個人間融資のリスク、詳しく解説します」をご覧ください。
<外部の関連サイト>:違法な金融業者にご注意!|金融庁
個人間融資の仕組み、どうなってる?
個人間融資で主に利用されるのが、「個人間融資」専用の掲示板やSNS(主にツイッター)です。
まず借り手が融資希望を掲示板に書き込み、それに対して貸し手が連絡を取るのが、掲示板での流れです。
借り手は名前や住所、メールアドレスや希望金額など条件を書いて、貸主からの連絡を待ちます。
掲示板を実際に見たところ、取り急ぎお金が必要な人が多い印象です。
とにかくお金を貸して欲しいと、ろくに理由を書いていない人もいれば、お金が必要な理由をかなり詳細に書いている人もいます。
また個人間融資には、貸し手が借り手を探すパターンもあります。
ツイッターで「個人間融資」や「お金貸します」などのハッシュタグをつけて、貸し手が投稿します。
それらのハッシュタグから借り手は貸し手を見つけ、リプ(返信)やDM(ダイレクトメッセージ)を送って、交渉を始めます。
いずれにしろ個人間融資を行うこと自体は、そこまで難しくありません。
<関連記事>:お金がない無職がお金を借りる方法はあるの?
個人間融資を利用するのは、どんな人?
個人間融資のメリットは、ほとんどの場合ネット上だけの取り引きで済み、金融機関のような審査がないことです。
このメリットを頼りに個人間融資を利用する人は、以下のような人です。
- ・銀行や消費者金融から借入れできない人(金融ブラック、自己破産など)
・家族や友人を頼れない人
・すぐにお金が必要な人
・収入のない人
・未成年の人
お金が必要なのにどこも頼れない人たちが、個人間融資を頼みの綱にしています。
ただ繰り返しになりますが、個人間融資を利用することはオススメできません。
<関連記事>:未成年(18歳・19歳)でもお金を借りれるカードローンは?
個人間融資のリスク、詳しく解説します
お金を貸してくれる相手が、ヤミ金や詐欺の可能性が高い
個人間融資では、基本的に取引相手がどんな人物か分かりません。
個人を名乗っていても実はヤミ金だったり、詐欺目的のケースがあります。
そうした場合、個人情報やお金をだまし取られたり、暴力を伴う取り立てに会う危険があります。
もしヤミ金や詐欺でなかったとしても、わいせつ目的の人が紛れていたりします。
以下では、個人間融資のリスクの具体的な内容を見て行きます。
<関連記事>:ソフト闇金とは?ヤミ金と何が違うの?
借りるリスク1:個人情報をだまし取られる
個人間融資の取り引きのため提示した、銀行口座の番号などの個人情報を悪用されるケースがあります。
個人情報をヤミ金に売られたり、そもそも取引相手がヤミ金だったりすると、「押し貸し」の被害にあう恐れがあります。
押し貸しとは、頼んでもないお金をヤミ金が勝手に貸付を行うことです。
ヤミ金はその後、法外な利息を付けて返済するよう迫り、返済できないと暴力を振るってでも回収を図ろうとします。
<関連記事>:押し貸しとは?ヤミ金の手口をわかりやすく解説
借りるリスク2:高金利・手数料をだまし取られる
通常金利をはるかに上回る高金利で融資されたり、手数料をだまし取られる可能性もあります。
「出資法」では、非金融業者の上限金利(年率)を109.5%と定めています。
正規の貸金業者からの上限金利は20%なので、これだけで法外な金利です。
さらに個人間融資では、109.5%(閏年は109.8%)を超える金利を要求する貸主もいます。
109.5%を超える金利を完全に違法で、これほどの高金利では返済が相当難しくなります。
また手数料をだまし取るケースもあります。
たとえば融資の前に手数料を借主に前払いさせて、実際の融資は行わず連絡を絶つ、といった具合です。
<関連記事>:利息制限法とは?その上限金利は?
借りるリスク3:犯罪に巻き込まれる
お金をだまし取られるばかりでなく、犯罪に巻き込まれるリスクがあるのも、個人間融資の恐ろしい所です。
個人間融資を利用したばかりに、性犯罪の被害者になってしまうケースがあります。
「ひととき融資」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ひととき融資とは、肉体関係を持つことを融資の条件にした個人間融資のことです。
ひととき融資はそれ自体ばかりでなく、行為の動画や写真を撮影されたり、それらをネタにさらに肉体関係や金銭を要求されるなど、2次被害を受けるケースが多いです。
<外部の関連サイト>:利息は体で…ネット上に潜む「ひととき融資」のわな | 産経ニュース
借りるリスク4: 加害者になってしまう
個人間融資を利用したことで、(意図せずに)自身が加害者になってしまうケースもあります。
返済ができなくなり、(本来は売却できない)銀行の個人口座を「売却」したら、その口座が振り込め詐欺に使われていた例があります。
銀行口座の売却は「名義貸し」にあたり、売った側の人間が詐欺罪で銀行から訴えられる恐れがあります。
もし知らずに口座が悪用されていた場合は、早く申し出るべきです。
多少は罪が、軽くなる可能性はあります。
口座を悪用させないためにも、もし口座を売却してしまったら、早めに銀行や警察に相談して下さい。
<関連記事>:名義貸しとは?ローン関係は絶対NG!
貸すリスク: 10年以下の懲役、3000万以下の罰金も
個人間融資のリスクというと、借り手のリスクを思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし貸す側にも、リスクはあります。
貸したお金が返ってこないリスクや、借り手の個人情報をだまし取られるパターンもあります。
さらに厄介なのは、お金を貸す側が「貸金業法」違反になる可能性があることです。
貸金業の無登録者が融資の勧誘を行うと、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金となります。
無登録者が貸金の営業を行うと、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金となります。
これらは貸し手が個人であっても、罰則の対象になります(貸金業法第47条)。
貸した本人としては軽い資産運用のつもりかもしれませんが、最悪、懲役10年の刑罰が待っており割に合いません。
<外部の関連サイト>:貸す側も、借りる側も個人間融資に要注意!|金融庁
それでも個人間融資を利用したい!リスクを回避するには?
個人間融資のリスクは、上で書いてきた通りです。
個人間融資の利用は、当サイトではオススメしません。
それでも借り手として個人間融資を利用したい人は、以下を参考にして下さい。
これは怪しい!ヤミ金や詐欺の見分け方
貸主がヤミ金や詐欺の場合、提示する融資条件のハードルが低いのが特徴です。
具体的には、以下の三点を掲げる書き込みは、怪しいと見ていいでしょう。
<金融ブラックOK、債務整理OKの書き込み>
金融事故や債務整理を行った人に、お金を貸そうとは思う人はまずいません。
ですが、こうした金融事故歴のある人ほど借入が難しいため、借入ニーズが高いと言えます。
ヤミ金や詐欺を企む人は、そうした人の弱みに付け込みます。
融資に飛びついてきた人から個人情報を盗んだり、口座を売らせたりして悪用し、借主をさらに追い込みます。
<24時間繋がる電話番号を公開している>
掲示板やSNSなどに、24時間繋がる電話番号を載せている場合も、ヤミ金や詐欺の可能性が高いです。
携帯電話の番号をネット上にさらすなど、常識のある人間の行為ではありません。
そうした携帯電話は、個人間融資で買い取られたものだったり、不正に取得した番号が用いられている場合が大半です。
<業者名を公開している>
貸主が認知度の高い消費者金融の名前を出している場合も、非常に怪しいです。
たとえば有名な消費者金融の社員が、社名を出して個人間融資を行うでしょうか?
むしろ大手の消費者金融の社員であれば、自分が行う個人間融資が勤務先に知られることを、非常に嫌がるはずです。
そもそも実在する消費者金融を詐称すること自体が、詐欺行為になります。
掲示板内やSNSで社名を名乗る書き込みがあっても、絶対に信用しないで下さい。
<関連記事>:審査なしのカードローンってあるの?
法外な高金利を提示してくる人とは、取引しない
非金融業者の上限金利(年利)が109.5%であることは、上でも触れました。
非金融業者が109.5%を上回る金利を要求すると出資法違反となり、貸主には刑事罰が課されます(出資法第5条)。
109.5%を上回る金利の提示を受けたら、それが違法であることを認識しましょう。
とはいえ(繰り返しになりますが)、仮に100%を下回る程度の金利であっても、これほどの高金利での借入は絶対にオススメできませんが。
出資法第5条
金銭の貸付けを行う者が(中略)、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
引用元:出資法第5条
もしも個人間融資の被害にあったら、ここに相談!
個人間融資で被害を受けてしまった場合、相談先はいくつかあります。
被害の内容によって相談先が変わる場合もあるので、参考にして下さい。
<警察>
詐欺や脅迫、暴行などの被害を受けた場合は、警察に届けましょう。
詐欺は親告罪であるため、被害者からの訴えがなければ立件できませんが、脅迫や暴行は親告罪ではないため、届け出無しでも立件できます。
ただし脅迫や暴行であっても、被害届がない限り警察も捜査できません。
警察に届けたり被害相談する際は、会話を録音した記録や被害の証拠を用意しておくと、手続きもスムーズに進みます。
<銀行>
口座を売却してしまった場合は、取り急ぎその口座の銀行に相談して下さい。
先ほど書いた通り、口座売却は銀行に対する詐欺行為にあたり、訴えられるリスクはあります。
ですが口座が悪用される前に凍結できれば、犯罪の加害者になることを防げます。
場合によっては、口座売却の罪が軽くなるかもしれません。
<消費者ホットライン「188」>
消費者ホットライン「188」をご存知でしょうか?
消費者ホットライン「188」は、消費者庁が2010年に開設しました。
このホットラインを利用すれば、居住する地域の消費生活センターや消費生活相談窓口などから、トラブルの内容に適した窓口を教えてもらえます。
<外部の関連サイト>:消費者ホットライン|消費者庁
<弁護士、司法書士(法テラス)>
お金をだまし取られた、高金利を請求された場合は、弁護士や司法書士を頼りましょう。
相談料を支払うのが難しければ、行政の無料相談や法テラスを利用する手もあります。
<関連記事>:お金がない時に役立つ即金アプリ!おすすめ7選を紹介
個人間融資の他にも、お金を借りる手段はある
<1.信用情報を確認、金融機関の審査に再挑戦>
個人間融資を利用する人の特徴は、過去に金融事故を起こした方と先ほど触れました。
ですのでまず、自分にまだ事故情報が記録されているか、確認しましょう。
金融事故は取引完了から5年から10年で、信用情報機関からデータが消えます。
もしも確認したことがないなら、信用情報機関に照会しましょう。
情報開示料に1000円の手数料がかかりますが、スマホやPCから簡単に請求できます。
情報を開示した結果、事故情報が載ってないなら、金融機関の審査にも挑戦できます。
<関連記事>:【元銀行員が解説】金融事故情報(ブラックリスト)とは?
<2.公的支援を利用する>
お金がなく困っている人にお金を貸す、公的な支援制度があります。
「生活福祉資金貸付制度」もその1つです。
「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」「不動産担保型生活資金」の中から、生活状況に応じた支援が得られます。
生活福祉資金貸付制度の利用条件はかなり厳しく、手続きも煩雑ですが、お金に困ったら申し込んでみることをオススメします。
市役所などに相談窓口もあるので、そちらを利用するのも良いでしょう。
<関連記事>:市役所でお金を借りる?生活福祉資金貸付制度とは?
<3.担保を使って借りる>
自宅や自動車、加入している保険がある場合は、それを担保にして融資を受けられます。
貯蓄型の生命保険に加入していれば、年率3%程度の低金利でお金を借りることが可能です。
また年金受給者であれば、年金を担保にすることもできます。
ただし年金を担保にした融資ができるのは、「福祉医療機構」と「日本政策金融公庫」の2つだけです。
それ以外の会社で年金を担保にした融資を宣伝していれば、違法業者なので気を付けて下さい。
<外部の関連サイト>:年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業|独立行政法人福祉医療
以上、個人間融資について、そのリスクも含めて解説しました。
個人間融資はネットやSNSを通じて手軽に行える融資ですが、安全性がとても低く、犯罪に巻き込まれるリスクがあります。
どんなにお金がなくて困っていても、個人間融資を利用することは(貸し手でも借り手でも)絶対にやめるべきです。
借金があるなら借入状況を確認したり、生活を見直すことから始めましょう。
自治体の支援など、利用できるものは何でも利用しましょう。
自分がどんな制度を使えるか分からないでしょうから、まずはお住まいの市役所の相談窓口に行くと良いでしょう。
- 個人間融資は、個人同士で行うお金の貸し借りで、専用の掲示板やSNSを通じて行われる場合が多い
- 個人間融資の利用者は、金融事故をした人・収入がない人・未成年など
- ヤミ金や詐欺の被害にあうリスクが大きく、自分自身が犯罪の被害者・加害者になる恐れもある
- 貸主として個人間融資を利用した場合、懲役10年以下の刑罰になるリスクがある(出資法違反)
- お金がどうしても必要なら、公的な支援制度などを利用する