ファクタリングについて調べていると、「ヤミ金」「違法」といった言葉を目にするかもしれません。
ファクタリングは便利な資金調達の一つですが、実際にヤミ金や悪質な業者が関わっている場合もあります。
そこで今回は、ファクタリングと称しているヤミ金業者の手口や、優良な業者との見分け方について紹介します。
目次
ヤミ金業者がファクタリングを行う手口とは?
ファクタリングとは?
「ファクタリング」とは、ファクタリング会社が企業から売掛金(=売掛債権)を 買い取り、手数料を引いた金額を企業に渡す取引のことです。
ファクタリングを利用すれば、企業は決済日よりも早く売掛金を現金化できるため、中小企業の資金調達の一つとして注目されています。
このように売掛金を買い取るファクタリングは、「買取ファクタリング」と呼ばれています。
また買取ファクタリングは、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つに分けられます。
2社間ファクタリングは名前の通り、ファクタリング会社と自社の2社間で取り引きをします。
そのため売掛金を売却したことが、取引先にバレる可能性は低いです。
ファクタリングの法的な位置づけは?
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社と自社による売掛金の売買となり、法律上は「売買契約」にあたります。
一方で3社間ファクタリングは、ファクタリング会社と自社、取引先の3社で手続きをします。
2社間ファクタリングとは異なり、取引先も手続きに参加するため、ファクタリングの事実が知られてしまいます。
また3社間ファクタリングの位置づけは、2社間ファクタリングの売買契約に加え、売掛金をファクタリング会社に譲渡しているので、「債権譲渡」にも該当します。
このようにファクタリングには法的な裏付けがあり、違法な行為ではありません。
ただ「ファクタリングを装ったヤミ金業者が、逮捕されたケースとは?」で説明するように、ファクタリングを装ったヤミ金業者が、法律に違反した行為をしている可能性はあります。
<関連記事>:ファクタリングとは?分かりやすく解説します
3社間ファクタリングを行う業者は安全
ファクタリングの手続きに、取引先も介入する3社間ファクタリングは、安全な業者である可能性が高いです。
3社間ファクタリングを営む業者の多くは、大手企業です。
たとえば三菱UFJファクターなどの銀行系ファクタリング会社も、基本的に3社間ファクタリングを行っています。
また債権の買取手数料は、0.5~3%と低めです。
2社間ファクタリングでのヤミ金業者の手法とは
2社間ファクタリングを取り扱う業者の中には、悪徳な業者も潜んでいます。
2社間ファクタリングを行う、ヤミ金業者の手法は以下の通りです。
2社間ファクタリングを行うヤミ金業者の手口 |
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それぞれ簡単に説明します。
ヤミ金の2社間ファクタリング会社が要求する手数料は高く、1回の取引で20~30%程度の手数料を取られます。
この数字を金利に換算した場合、年率200~360%となり、法外な手数料だと分かります。
ファクタリング契約に償還請求権を付けるのも、ヤミ金業者がよく使う手口です。
本来ファクタリングは債権売買の取引であり、売掛金の取引先が倒産した時の損失はファクタリング会社が背負うことになります。
一方でファクタリング契約に償還請求権を付けると、取引先の倒産による損失は利用企業が負うことになります。
ですが償還請求権を付けると契約は貸金取引と見なされ、貸金業の登録が必要になります。
ヤミ金業者が貸金業の登録を行うはずもなく、違法に取引を行っています。
この償還請求権にペナルティを付けるのも、ヤミ金業者がよく使う手法です。
償還請求権がある以上、買い取られた売掛金の代金分を返済すれば良いはずなのに、返済できない場合はその倍額を請求する業者がいます。
利息制限法・出資法を上回る手数料のため、出資法違反の罪となります。
民法改正によりヤミ金業者の拡大も?
2017年5月に行われた民法改正が、2020年4月1日から施行されました。
この改正によって、「債権譲渡禁止特約」の契約が無効となります。
債権譲渡禁止特約とは、言葉の通り債権(=売掛金)の譲渡を禁止するものです。
一般的な商取引では、債権禁止特約が明記されているケースが多くあります。
禁止特約が付いている債権を、取引先の同意なしにファクタリング会社に売却してしまうと、(2020年3月までの)法律では最悪の場合「譲渡無効」とみなされる可能性がありました。
しかし民法改正により、債権譲渡禁止特約は無効であると明記されました。
そのため取引先の同意なしに、禁止特約が付いている債権を売却しても、譲渡は有効となります。
以前は債権譲渡禁止特約があったため、2社間ファクタリングは法的にグレーな位置づけでしたが、民法改正によって合法となります。
債権譲渡禁止特約が機能しなくなり、ヤミ金業者による2社間ファクタリングの拡大が懸念されています。
<関連記事>:ヤミ金とは?その悪質な手口を紹介します!
ファクタリングを装ったヤミ金業者が、逮捕されたケースとは?
先ほどはファクタリング取引で、ヤミ金業者の手口を説明しました。
以下では実際のファクタリング取引で、ヤミ金業者が逮捕された事例を紹介します。
事例1:東洋商事とMINORI
ファクタリングを装い、ヤミ金を営んだとして全国で初めて逮捕されたのは、「東洋商事」と「MINORI」です(2017年1月)。
出資法違反と、無登録営業による貸金業法違反の疑いで摘発されました。
<関連記事>:出資法とは?元銀行員がわかりやすく解説します!
出資法違反とされた理由は、ファクタリングを装いながら、売掛金を担保に高金利で融資を行ったと判断されたためです。
ファクタリングを装っているヤミ金業者は、売掛金を「分割」で「利子」をつけて受け取るケースがあります。
しかしファクタリングは債権の売買取引であり、分割での返済や利息は発生しません。
ちなみに東洋商事とMINORIは、約250社の中小企業に3億円以上を貸し付け、1億円以上の利益を得ていました。
かなりの高金利で、融資をしていたことが分かります。
また利子をつけて返済を求めている場合は、貸金業に該当します。
貸金業登録をせずに、貸し付けを行っているのは違法な業者です。
このため東洋商事とMINORIは、出資法と貸金業法違反で逮捕されました。
<外部の関連サイト>:債権買い取り装い高利貸し 東京の2業者8人を逮捕 │ 産経WEST
事例2:エムピーシー
ファクタリングと称しながら、高金利の貸金業を営んだとして、貸金業「エムピーシー」の元社長らが逮捕されました(2017年6月)。
エムピーシーは事例1とは異なり、貸金業登録を行っていました。
<関連記事>:ノンバンク(貸金業者)とは?分かりやすく解説
そのため逮捕理由は、出資法違反のみです。
エムピーシーは、法定利息の5倍もの利息を請求していたため、逮捕に至りました。
<外部の関連サイト>:高金利で貸金業の元社長ら逮捕 「ファクタリング」の捜査で浮上│ 産経WEST
事例3:高橋企画
上の2つの事例と同様に、東京都内のコンサルティング会社「高橋企画」が、ファクタリングを装いながらヤミ金を営んでいたとして逮捕されました(2019年9月)。
高橋企画もファクタリングと称しながら、実態は貸金業を営んでいたとされています。
出資法違反と、貸金業法違反の疑いで逮捕され、東京都や静岡県などの中小企業に約500万円を貸し付け、法定の約13~47倍の利息を受け取っていました。
その他にも高橋企画は2017~19年の間に、事業主約7100人に約30億円以上を融資し、約7億円の不正な利益を得ていたとされています。
<外部の関連サイト>:債権の買い取り装いヤミ金営業容疑│朝日新聞デジタル
ヤミ金がファクタリング業者を装っている場合の特徴は?
ファクタリングを利用したいと考えている方は、優良な業者とヤミ金を見分ける必要があります。
ここからは、ヤミ金がファクタリングを装っている場合の特徴を紹介します。
取引手数料が高い
上でも説明したように、取引手数料が圧倒的に高い業者はヤミ金の可能性があります。
ヤミ金業者は1回の取引で30%を超える手数料を請求する場合もあり、オススメできません。
とはいえ手数料が高いからといって、ヤミ金とは限りません。
先ほども説明した通り、2社間ファクタリングは取引1回の手数料が20-30%と高めな場合が多いです。
ですが、「2社間ファクタリングの業者がヤミ金業者」という訳ではありません。
大半の業者は、ヤミ金とは無縁の会社です。
ですが20-30%程度の手数料ということは、年率換算で240%から360%の金利水準になります。
法律には違反していませんが、それでも大きな負担なのは間違いありません。
ヤミ金か否かに関係なく、ファクタリングの利用前に手数料は必ず確認して下さい。
<関連記事>:ソフト闇金とは?ヤミ金と何が違うの?
契約書に「債権売買」「売買契約」の文字がない
業者が捺印を求める契約書は、よくチェックして下さい。
特に、契約書に「債権売買」「売買契約」といった文字がないか、入念に注意して下さい。
契約書にそうした文字がないと、仮に売掛金が回収できなかった場合、ファクタリング業者に返金を要求されることになります。
売掛金(債権)を売却するのがファクタリング取引のはずなのに、取引後もリスクを背負わされることになるのです。
全く割に合わないし、これがヤミ金の手口でもあります。
ちなみに、この時に交す契約書は「金銭消費貸借契約書」になっているはずです。
これは売掛金を担保にお金を借りるという、「債権担保融資(ABL)」(つまり借入契約)の体裁にしているのです。
こうした取引は貸金業者の免許が必要なため、相手がヤミ金業者の場合は違法行為となります。
その他、契約書に「償還請求権」が明記されていると、業者は返金を請求できるので要注意です。
もちろん、契約書を用意できない業者は論外なので、絶対に取引しないで下さい。
<関連記事>:金銭消費貸借契約書とは?分かりやすく解説
不払い時のペナルティーが厳しい
売掛金が回収できない場合に、その金額分だけ請求をしてくるヤミ金業者の手口を上では紹介しました。
この発展系として、売掛金が回収できない場合に倍額を請求してくるヤミ金業者もいます。
不履行時のペナルティーとして、債権額の2倍の違約金を請求できる契約になっている場合は、要注意です。
ここでは100万円の売掛金を、ヤミ金のファクタリング業者に70万円で買い取っても貰った例で考えてみます。
この売掛金の100万円がキチンと回収できれば、問題ありません。
ですが取引先が業績不振や倒産などにより支払できない場合、売掛金の倍の200万円をヤミ金に請求されるのです。
繰り返しになりますが、ファクタリングの取引をする際は、契約書の文言を全てチェックして下さい。
業者が口頭で別の説明をしていても、(違う説明の)契約書に捺印をしていれば、その契約書の内容が正式なものとなるからです。
高い利息を付けて分割での返済を求められる
売掛金の取引先が倒産しても、その損失はファクタリング会社が負うため、本来なら利用企業はダメージがありません。
ですが契約に償還請求権を付けて利用企業にリスクを負わせるのが、ヤミ金業者の手口です。
売掛金の会社が倒産して代金の返済ができない時に、ヤミ金業者は分割払いによる返済を持ちかけます。
これだけなら良い話に見えますが、ここで高額な手数料(利息)を上乗せして分割返済を要求してくるのです。
利息制限法の上限を超える手数料のため、本来なら断ることが出来ます。
ですが利用会社が一括返済できない弱みに付け込んで、ヤミ金のファクタリング会社はさらに利益をむしり取りに来ます。
<関連記事>:ファクタリングで返済できない場合、どうすれば良い?
給与ファクタリングはヤミ金の可能性も
これまで企業向けのファクタリングについて説明してきましたが、ここでは個人向けのファクタリングである、「給与ファクタリング」を紹介します。
給与ファクタリングとは、将来の給与を事実上の担保として、給料日前に融資を行うサービスです。
<関連記事>:給料ファクタリングとは?給与前払いサービスとの違いは?
給与ファクタリング業者を通して、給料の前借りができるサービスですが、手数料が高く法的にグレーな取引です。
10~20%の手数料を取られるケースも多く、優良な業者とは言えません。
ヤミ金業者が絡んでいるケースも多いため、当サイトでは利用をオススメしません。
また金融庁は2020年3月に、「給与ファクタリングは貸金業に該当する」との見解を示しました。
そのため、給与ファクタリング業者に対する規制は進んでいくと考えられますが、ヤミ金業者が一掃されるにはある程度の時間がかかるでしょう。
<外部の関連サイト>:給与ファクタリングを貸金業と認定│日本ファクタリング業協会
以上、ヤミ金業者がファクタリングで行う手口を見てきました。
ファクタリングと言っても、2社間か3社間かで中身は大きく異なり、2社間にはヤミ金が潜んでいるケースも考えられます。
ただファクタリングの取引自体が、違法な訳ではありません。
ファクタリングを利用する際は、取引手数料や不履行時のペナルティーなどの項目に、しっかり目を通しましょう。
この記事のまとめ |
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