「元本確定期日」という言葉を、聞いたことはありますか?あまり聞き慣れない言葉ですが、根保証や根抵当の契約で使われる金融用語です。
簡単に言ってしまえば、元本が確定する期限を指します。ただこれだけで意味を理解するのは難しいと思うので、今回は元本確定期日について詳しく解説していきます。
目次
元本確定期日って何?キホンを解説
元本確定期日とは
元本確定期日とは、主たる債務の元本の確定すべき期日という意味です。「根保証」や「根抵当」の契約で使われています。
元本確定期日が来ると、保証・担保すべき債務(=借金)の金額が確定します。ここで簡単に、根保証と根抵当の元本確定期日について、それぞれ説明していきます。
まず根保証とは、現在から将来まで発生する債務を限度内で全て保証することを指します。根保証の元本確定期日とは、保証される元本が確定する期日のことです。
契約期間や元本確定期日のルールについては、<元本確定期日のルールは?>で説明します。
次に根抵当とは、借主が返済できない場合に弁済に充てられる担保のことで、担保される債務の金額が契約時に確定してないのが特徴です。根抵当における元本確定期日とは、確定してない(担保すべき)債務が確定する期日のことです。
根抵当の元本確定期日における期間やルールについても、<元本確定期日のルールは?>で詳しく見ていきます。
なぜ元本確定期日が必要なの?
根保証と根抵当権の契約時には、極度額(=限度額)の設定をするので、保証人や根抵当権設定者が無制限に負担(=保証や担保)を背負う必要はありません。ただ根保証や根抵当といった負担は、極度額の範囲内とはいえ、債務者が支払えない等のもしもの場合に備える必要があります。
さらに実務上、弁済すべき債務をどこかのタイミングで確定させる必要があります。この確定するタイミングが、元本確定期日です。
元本確定期日がなければ、保証人や根抵当権設定者はどこまで負担を負えば良いのか分かりません。そのため後で詳しく見ていきますが、元本確定期日は契約時から5年以内に定めるよう、民法で定められています。
<関連記事>:極度借入額とは?利用限度額との違いを解説します
根保証における元本確定期日について
個人における根保証契約の概要は、2005年の民法改正によって大きく変わりました。ここからは民法改正後の、個人の金銭の貸し借りに関連する根保証契約(「貸金等根保証契約」)での元本確定期日について説明していきます。
<関連記事>:根保証とは?分かりやすく解説!
元本確定期日のルールは?
根保証の元本確定期日とは、保証すべき元本債務が確定する期日のことです。元本確定期日を定める際には、以下のルールを守る必要があります。
根保証の元本確定期日のルール |
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このようなルールは、民法第465条の3で定められています。
民法第465条の3
貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(中略)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
引用元:民法第465条の3
また元本確定期日は原則、書面で定める必要があると説明しましたが、契約日から3年以内の日を元本確定期日とする場合は、書面がなくても有効となります。元本の確定は、根保証契約における保証人の負担を軽減させるために存在します。
しかし元本確定期日を契約日から3年以内とするのであれば、保証人にとって有利な契約となるため、書面に残しておく必要は必ずしもないのです。
根保証でのケーススタディ
ここまで根保証の元本確定期日について説明してきましたが、まだ分かりづらい部分もあるでしょう。以下では根保証における元本確定期日について、例を用いて解説します。
AさんはC銀行からお金を借りようと思っていますが、信用力が低いのでBさんに根保証の保証人をお願いしました。ここでAさんが債務者、Bさんが保証人、C銀行が債権者とする極度額50万円の根保証契約を結びました。
AさんはC銀行から50万円の借入枠を設定し、根保証契約の元本確定期日は契約日から5年後としました。Aさんは50万円の範囲内で借りたり返したりを繰り返し、5年後の(つまり元本確定期日の)時点での借入は40万円でした。
この時AさんとC銀行の間で、根保証契約の更新はしないことが決定しました。Aさんは元本確定期日が来た後も追加で5万円借り、最終的な借入額は45万円でした。
しかしAさんは返済の目処が立たなくなり、自己破産をしたため45万円の返済は一切不可能となりました。この時C銀行がBさんに請求できるのは、40万円です。
Bさんの保証金額(=Aさんの保証対象の債務)は、元本確定期日が到来した日(契約から5年後)に確定しているので、それ以降の借入についてBさんが負担する必要はありません。このように根保証契約に極度額や元本確定期日の規定があることで、Bさんが無制限に保証する事態は免れます。
<関連記事>:代位弁済とは?分かりやすく解説!
根抵当権における元本確定期日について
上でも少し触れましたが、同じ元本確定期日でも根保証と根抵当で扱いが異なります。以下では、根抵当における元本確定期日について解説していきます。
元本確定期日のルールは?
根抵当の元本確定期日とは、根抵当権によって担保すべき元本が確定する期日のことです。根抵当の元本確定期日を取り決める際は、以下のルールを守る必要があります。
根抵当の元本確定期日におけるルール |
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根抵当の元本確定期日は主に、民法第398条の6で定められています。
民法第398条の6
根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
引用元:民法第398条の6
根抵当における元本確定期日は、根保証と同じく最大でも5年です。また元本確定期日を特に設定しなかった場合、3年が経過すると設定者の好きなタイミングで元本を確定させられます(設定者の請求から2週間以内)。
根抵当でのケーススタディ
根抵当の元本確定期日も複雑で、理解しづらい部分もあるでしょう。ここからは例を使って、元本確定期日について説明します。
1000万円分の土地を持つAさんは、ノンバンクB社に融資の申し込みをしました。そこでB社はAさんの土地に、極度額700万円とする根抵当権を設定して、借入枠700万円の当座貸越契約をAさんと結びました。
この時、元本確定期日の指定を両者とも忘れていたとします。3年後、B社から500万円の借入があったAさんは元本確定を請求し、元本は500万円に決定しました。
これによりAさんの担保は、500万円の抵当権になりました。その後Aさんは追加で100万円の借入を行い、借入の合計額は600万円となります。
しかしAさんは返済に行き詰まったので、B社はAさんの土地を競売にかけることにしました。土地は700万円で売却しましたが、B社は抵当権分の500万円しか回収できず、残りの200万円はAさんの手元に戻りました。
B社は残りの100万円を、引き続きAさんに請求していきます。このように土地などに根抵当権を設定していると、極度額の範囲内であれば、何度も抵当権の設定をせずに保証がされます。
また元本確定期日が来て元本が確定すれば、根抵当権は抵当権と同じ性質となります。
<関連記事>:担保とは?分かりやすく解説
以上、元本確定期日について見てきました。元本確定期日は、根保証か根抵当かによって扱いが変わります。
ただ細かいルールや扱いは変わっても、元本確定期日が来ると、保証・担保すべき債務(=借金)の金額が確定するという意味では同じです。また元本確定期日は、根保証または根抵当の契約を結ぶ両者の間で、取り決める期日であることも覚えておきましょう。
この記事のまとめ |
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