「過払い金を請求すれば払い過ぎた利息が戻ってくる」という話を、テレビCMなどで聞いたことはありませんか?
しかし、そもそも「過払い金」とは何なのか、どうすれば戻ってくるのかなど、分からない人が多いはずです。
ここでは過払い金の基本を解説し、過払い金請求の際の注意点などを紹介します。

この記事の監修者: 弁護士 郡司 理
都内法律事務所勤務を経て、2017年に弁護士法人日栄法律事務所共同代表 虎ノ門,池袋,町田にオフィス開設 取扱い分野は建築紛争、労働事件、ハラスメント対応など
「過払い金請求」って何?
過払い金とは、キャッシングで払い過ぎた利息のこと
「過払い金」とは、消費者金融などの貸金業者からキャッシングした人が、払い過ぎた利息のことです。
過払い金を理解するためには、過去に貸金業者が適用していた、グレーゾーン金利を知る必要があります。
グレーゾーン金利とは、「利息制限法」と「出資法」で定められた上限金利の間にあった金利差をいいます。
当時の出資法の上限金利は、当時29.2%に定められており、違反した貸金業者には刑事罰が科されました。
一方、利息制限法の上限金利は、借入額に応じて15~20%の間で定められていますが、違反した際の罰則規定はありませんでした。
このため多くの貸金業者は、出資法の上限金利である29.2%という高金利で、貸し付けを行っていました。
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過払い金請求とは、払い過ぎた利息の返還を求めること
2006年1月に、最高裁判所によってグレーゾーン金利を違法と見なす判決が下されました。
それまでに利用者が払っていたグレーゾーン金利分の利息は無効とされ、過払い金として返還義務を負うことが決まりました。
つまり「過払い金請求」とは、払い過ぎたグレーゾーン金利の利息分の返還を、貸金業者に請求することを指します。
最高裁判決をきっかけに過払い金請求が激化し、貸金業者はその対応に追われました。
過払い金の請求先は?
グレーゾーン金利での貸し出しをしていた貸金業者が、もれなく対象になります。
つまりアコム、プロミスなどの消費者金融だけでなく、クレジットカード会社や信販会社に対しても、過払い金請求が可能です。
ただしクレジットカードの「ショッピング枠」に関しては、過払い金請求ができません。
過払い金請求はあくまで「借金の利息」に対して行うものであって、ショッピング枠は「立て替え」にあたるからです。
また銀行カードローンに対しての、過払い金請求もできません。
銀行は利息制限法の範囲内での融資しか行っていないため、そもそも過払い金が発生しなかったからです。
<関連記事>:クレジットカードの現金化ってヤバイ?
過払い金請求のメリット・デメリット
メリット1: 払い過ぎたお金が戻ってくる
過払い金請求の最大のメリットは、払っていたお金が戻ることです。
過払い金は本来払う必要のない利息であり、自分のお金です。
とはいえ借入をした当初、利息の一部が戻ってくるなんて考えた人はいなかったはずです。
過払い金請求さえすれば、思いもかけぬ「臨時収入」が入ることになり、キャッシング利用者からすれば大きな役得ですよね。
<関連記事>:【元銀行員が教える!】お金がない時の乗り切り方は?
メリット2: 完済していれば事故情報にも登録されない
以前は過払い金請求をすると、信用情報機関に事故情報として登録されていました。
しかし弁護士の抗議が相次いだこともあり、2010年に金融庁より、「過払い金返還請求は法律で認められた正当な権利であるため信用情報に登録することを禁止する」ことが発表されました。
したがって現在は借金を完済していれば、過払い金請求をしても事故情報に登録されなくなりました。
<外部の関連サイト>:過払返還請求履歴を信用情報とは認めず|司法書士法人H&Wトラスト
デメリット1: 過払い金請求した会社からは借入できなくなる
デメリットの一つ目は、請求した会社からは今後の借り入れができなくなることです。
請求した会社のデータベース内で、過払い金の請求者として登録されるためです。
ただし過払い金請求をした会社以外からは、借金ができるので安心してください。
なお過払い金請求は、1社につき1回と定められています。
デメリット2: 弁護士に依頼すると手数料が発生する
過払い金請求は、弁護士に依頼するのが一般的です。
ですが依頼すると、手数料が発生します。
多くの事務所では、弁護士費用は着手金・解決報酬金・過払い金報酬の3つに分類されています。
着手金と解決報酬金は2~3万円、過払い金報酬は返還された過払い金の20%程度が相場です。
自分一人で過払い金請求をすることもできますが、請求書の作成や貸金業者との交渉を自力でする必要があり、非常に手間がかかります。
また自宅に郵送物が届くので、家族にバレるリスクも伴います。
過払い金を請求できないケースは?

時効(=10年)が過ぎてしまった場合
過払い金請求には時効が存在します。
過払い金を請求できるのは、「借金を完済した日から10年以内」と決まっており、これを過ぎると請求権が消滅します。
時効の10年を迎える前に、行動することが重要です。
業者が倒産している場合
貸金業者の中には、過払い金請求に追われ、すでに倒産した会社もあります。
請求先の貸金業者が倒産している場合は、過払い金が回収できない可能性が高いです。
返還されても、本来の1~3%の過払い金しか戻ってこないケースが多いです。
借入先がヤミ金業者の場合
ヤミ金からの回収は不可能と考えてください。
違法業者ですので、最初から法律を守る気はありません。
何かあったら逃げ出せるように、利用者に噓の住所や電話番号を伝えていることもザラです。
<関連記事>:ヤミ金とは?その悪質な手口を紹介します!
過払い金請求で気を付けるべきポイント
借入期間中に過払い金請求をすると、事故情報に登録される
過払い金請求のメリットの2つ目で、完済していれば事故情報に登録されないと述べました。
しかし借金が残っている状態で過払い金請求を行った場合は、事故情報に登録されてしまいます。
これは債務整理と同様に扱われてしまうためです。
事故情報に登録されると、カード作成やローン審査にも悪影響が出てしまうので、必ず完済してから過払い金請求を行ってください。
<関連記事>:【元銀行員が解説】金融事故情報(ブラックリスト)とは?
請求先に借金が残っている場合、過払い金で相殺される
過払い金の請求先に借金がある場合、過払い金にはまず返済にあてられます。
たとえば10万円借金が残っている会社に過払い金請求をして、6万円の返金が認められたとします。
その6万円は手元に返ってくるのではなく、借り入れしている10万円と相殺されるので、残りの借金は4万円となります。
請求先の関連会社に借り入れがある場合や、請求先が保証会社の場合も同様のルールが適用されます。
たとえば、すでに借金を完済したA社と、まだ借金のあるB社があり、A社とB社はグループ会社だとします。
この時、A社に対する過払い金請求が認められても、その返済金はB社の借金と相殺されることになります。
過払い金請求は弁護士に依頼するのがオススメ
過払い金請求のデメリットのところでも少し触れましたが、過払い金請求は弁護士に頼むのがオススメです。
複雑な条件が絡んでいたり、法の知識がないと自力で作成するのが難しい書類がいくつもあります。
多少の手数料は発生するものの、知識も経験も豊富な弁護士に任せた方が安心です。
過去の借入れ書類を用意しておく
弁護士に過払い金請求の相談をする場合、過去の借入・返済の明細があるとスムーズに進みます。
手元にあれば持ち出せるよう準備しておきましょう。
ただし過去の借入れ書類がなくても請求はできます。
弁護士に依頼すれば、代わりに過去の借入状況の調査を行ってくれます。
時効を迎える前に早めの請求を
改正貸金業法が完全施行された2010年6月18日をもって、過払い金が発生することはなくなりました。
ですがそれ以前に借入がある場合、まだ請求可能な過払い金が残っている可能性があります。
心当たりがある人は、時効を迎える前に早めに弁護士に相談しましょう。
以上、過払い金請求の基本と注意点について見てきました。
注意点は多いですが、弁護士にアドバイスをもらいながら手続きを進められるので安心してください。
過払い金に心当たりがあれば、気軽に弁護士に相談してみてください。
この記事のまとめ |
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<監修者のコメント>
過払い金請求は、お手元に借り入れの際の書類が残っていなくても、弁護士に依頼すれば弁護士の方で過去の取引経過を記載した帳簿の開示請求を行い、これが過払い金計算の基礎資料となります。
過払い金の回収は、交渉によって実現をすることもできますが、交渉では業者から何割かの過払い金のカットを求められることになります。
また、そもそも訴訟提起前の和解に応じない業者も多く、結局は早めに訴訟に踏み切った方が早期に有利な解決を図ることができる場合が多いです。
そこで過払い金請求をお考えの方はぜひ一度弁護士、司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。
過払い金の相談は初回無料のところが多いと思います。
なおご相談の際は、「整理屋」と連携して債務整理を行う弁護士や司法書士に注意する必要があります。
このような弁護士・司法書士は自分で業務を行わず外部の「整理屋」に業務を丸投げするため、事件処理が遅れたり、杜撰な事件処理を行う恐れがあります。