「名義貸し」は何となく良くないこと、ぐらいのイメージを持っている方もいるかもしれません。もちろん中には、「名義貸しなんて自分には関係ない」と感じている人がいるでしょう。
ですが、そのリスクをよく知らなかったせいで、名義貸しで痛い目に会った人は大勢います。今回は、名義貸しのリスクについて詳しく見ていきます。
目次
名義貸しとは?分かりやすく解説!
名義貸しとは?
「名義貸し」とは、自分の名義を別の誰か(知り合いとか家族とか)に貸し、その誰かが自分名義で契約することを指します。ローン契約の名義貸しが特に多いですが、それ以外に、携帯電話の契約や銀行口座の開設でも、名義貸しが行われる場合があります。
当然ですが、これは違法行為でして、金融機関・貸金業者ともに厳しく禁じております。
名義貸しは詐欺罪になる!
名義貸しは詐欺罪が適用され、最悪、懲役10年の刑罰に処されます(刑法246条)。ここでのポイントは、詐欺罪の対象になるのは名義貸しを依頼した人でなく、名義を貸した人になる点です。
仮にあなたが友人に頼まれて名義を貸して、友人があなたの名義で銀行から借入をしたとします。この場合、あなたが銀行に対して詐欺を働いたことになる、というのが法律的な考え方です。
刑法246条
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
名義貸しが行われる理由
名義貸しは違法(詐欺罪)なのに、なぜ行われるのでしょうか?典型的なのは、何らかの事情で自分では契約できないので、誰か他の人の名義で契約しようとするためです。
例えば、「ブラックリストに載った」人は借入審査に通らないため、どうしても借入したかったら、名義貸しを利用するかもしれません。普通なら、そんなブラックリストの人に名義を貸す人なんて、いないでしょう。
ですがその人が親友で、「絶対に迷惑をかけない。助けてくれたら、一生恩に着る」と言われたら、つい名義を貸してしまう人もいるかもしれません。こうした義理人情にからめたケースは、非常によくあります。
それ以外に、犯罪と絡めたケースもあります。
<関連記事>:消費者金融で滞納するとブラックリストに載るって本当?
名義貸しのよくあるケース
ここでは、名義貸しに巻き込まれる典型的なケースを見ていきます。
名義貸しに巻き込まれる典型的なケース |
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<1.知り合いにお願いされるケース>
名義貸しで一番多いのは、このケースです。親交の深い人から真剣にお願いされてしまうと、断れない人もいるかもしれませんが、絶対に断りましょう。
名義貸しを依頼しているということは、その人がお金にルーズな証拠です。「借金は必ず返す!絶対に迷惑をかけない」と言われても、その後、借金を返せないケースがほとんどです。
<2.アルバイトで軽い気持ちで名義を貸す>
アルバイトのケースは、「簡単に稼げるアルバイト」という名目で人を集められます。最近は、「簡単に稼げる副業」という名目でネットで集客してるパターンも多いです。
申し込んだ人は数万円受け取る代わりに、自分名義でクレジットカード・カードローン・携帯の契約をさせられます。「返済(支払)はコチラでやるので、迷惑をかけない」と説明を受けますが、ほとんどは嘘です。
大学生や20代社会人などの若い方が被害に合うケースが多く、軽い気持ちで申し込んで、後でだまされた事に気づきます。
<3.ヤミ金業者から強要されて>
ヤミ金の返済に行き詰って、名義貸しを強要されるケースです。ヤミ金の返済ができなくなった時、ヤミ金業者は返済を待つ代わりに、自分名義の銀行口座や携帯電話を契約するよう命令されます。
契約した銀行の通帳や携帯電話は、もちろん取り上げられます。銀行の通帳(銀行口座)はマネーロンダリング、携帯電話は「おれおれ詐欺」といった犯罪に使われます。
名義を貸す側も、「良くないことに使われる」ことは薄々分かっていますが、ヤミ金業者に断ることが出来ず、なし崩しに名義を貸します。
<関連記事>:ヤミ金とは?その悪質な手口を紹介します!
勝手に名義を使われるのは、名義貸しではない!
名義貸しは自分の意思で名義を貸す行為ですが、知らずに名義を使われた場合はどうでしょう?これを「名義冒用(めいぎぼうよう)」と言いまして、名義貸しとは違います。
<外部の関連サイト>:身に覚えのないカードローン(相談事例と解決結果)_国民生活センター
とはいえ申し込み者の名義と、実際の利用者が違う点では同じです。後で詳しく説明しますが、名義貸しでは、名義を貸した本人が返済義務を負うことになります。
一方で名義冒用の場合は、返済義務の免除を主張できます。名義貸しは貸した側にも責任がありますが、名義冒用は名義を使われた側も被害者になるからです。
ですが名義冒用により、それ以降のクレジットカードやローンが通らないケースもあります。個人情報の管理にも、注意を払う必要があります。
<関連記事>:消費者金融で勝手に借りられた!他人名義のカードローンの対処法は?
名義貸しは絶対NG!そのリスクについて
最悪、懲役刑もあり
名義貸しは、依頼した人が悪いのは言うまでもありません。ですが先ほど説明した通り、詐欺罪に問われるのは、名義貸しを依頼した人ではなく、名義を貸した人です。
しかし万一、クレジットカードやローンを名義貸しで審査が通過した場合、リスクを負うのは名義貸しをした本人になります。詐欺罪で捕まると、懲役10年以下の罰則が待っています。
もちろん実際に懲役刑になるかは、(銀行などの)被害者との示談によっても違ってきます。示談が成立すれば罰金(10万円から50万円程度)で済む場合もありますが、示談を拒否されたら実刑もありえます。
以上のように、名義貸しにはリスクしか存在しません。多少の恩がある人から名義貸しを頼まれても、絶対に応じてはいけません。
返済義務は名義を貸した人間が負う
名義貸しを依頼する側は、「返済(支払)は必ず自分がやるから。あなたに絶対に迷惑をかけない」などと言うはずです。ですが約束通りに、その人が返済をしてくれる保証は全くありません。
むしろ高確率で、約束を反故(ほご)にされます。そうなった時に、法的な返済義務は名義貸しをした、あなたに発生します。
あなたが2か月以上返済に遅れたら、事故情報として信用情報機関に登録されます。そうなると一定期間(5年ほど)、新規の借入が一切できなくなります。
<関連記事>:多重債務者とは?借金解決の方法は?
名義貸しで支払い催促が来た場合、どう対処したらいい?
先ほど説明した通り、ローンの返済が滞った場合、返済義務は名義貸しした本人にあります。どうにか、請求を免れる方法はないのでしょうか?対応としては主に2つの方法があります。
・求償権を行使する
・被害届を出し直接本人もしくは親族に請求する
一つずつ見ていきます。
求償権を行使する
「求償権」とは、他人の債務を弁済した人が、弁済した金額を償還請求できる権利のことです(民法第442条)。ただし求償権があるのは、あくまで弁済した金額だけです。
ローン・カード会社などへ実際に返済した金額に対してのみ、名義を貸した相手に求償権を行使することができます。この手続きについては、弁護士に相談するとよいでしょう。
とはいえ求償権を行使したからといって、相手が無一文なら全額が戻ってくる見込みは低いです。
被害届を出し直接本人もしくは親族に請求する
警察への被害届を出すことです。名義を貸した相手の財産差し押さえや、当人が財産がなければ親族による請求も法的に可能です。
ただし、こちらも確実ではありません。そもそも名義貸しをしている時点で、詐欺罪にあたります。
警察側が被害届を受理しないケースもあり、結果的に泣き寝入りとなるケースが多いです。上記のように、対応する方法はあっても確実性はなく、むしろ返金される可能性は低いです。
名義貸しの被害に遭わないためには
繰り返しになりますが、名義貸しは非常にリスクが高いです。相手がどれだけ信用できる人でも、名義を絶対貸してはいけません。
名義貸しは、詐欺罪です。あなたが捕まって、懲役刑を受ける恐れもあります。
法的に名義貸しした相手を訴えることは可能ですが、現実にお金を取り戻せる可能性は低いです。バイト感覚で名義貸しをするのも、絶対にNGです。
副業感覚で、スマホ契約の名義貸しのバイトをする人が時々いますが、あとで相当なトラブルに巻き込まれます。
以上、名義貸しのリスクについて見てきました。名義貸しは経済的リスクだけでなく、詐欺罪で捕まるリスクもあります。
知人・親戚・家族に対しても、バイト感覚でも、名義貸しは絶対に手を出さないでください。
この記事のまとめ |
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