融資を受ける際に、「担保」の設定を求められる事があります。担保の有無によってローンの性質も変わってくるので、担保の意味を理解しておくことは重要です。
ここでは担保の基本知識や、担保ローンのメリット・デメリットなどを見ていきます。
担保とは?キホンを一から解説
担保って何?
「担保」とは、債務者がお金を返済できない場合に備えて、あらかじめ債権者に提供される事物です。債務者が借金を返済できなくなった場合、事前に設定した所有財産(=担保)から債権者は貸付金を回収できます。
担保は大きく2種類に分類されます。それぞれの種類については、「担保の種類:物的担保と人的担保について」で詳しく説明します。
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担保の意義は?
担保の主な効力は、以下の2つです。
・留置的効力:担保を留置することで間接的に債務の履行を強制する効力
・優先弁済的効力:債務不履行の際に他の債権者から先立って、担保から優先的に弁済を受ける効力
一つ目の「留置的効力」とは、債務者に心理的な圧力をかける効力です。担保を設定することで、債務者は必ず返済しなければというプレッシャーを感じるようになります。
返済不能に陥った場合は、弁済のために担保処分を強制されるためです 。
二つ目の「優先弁済的効力」とは、債権者の貸し倒れリスクを保全する効力です。債務者は、多くの借金を抱えている場合があります。
それだけ債権者がいることになり、担保や保証人がない場合、債務者が破たんした時に債権者は十分な債権回収が出来ないリスクがあります。ですが担保を確保していれば、他の債権者に先立って担保から弁済を受けられます。
設定した担保を処分した際に生じる利益を、他の債権者に奪われることはありません。債権者は担保を設定しておくことで、債務者に対しても他の債権者に対しても、有利な立場に立つことができます。
担保が必要になるのはどんな時?
担保が必要になる代表的なケースは、「住宅ローン」や「不動産担保ローン」です。住宅ローンでは購入する自宅や土地に、不動産担保ローンでは購入する物件が担保として設定されます。
債務者が返済できなくなった場合は、担保に設定した物件が最終的には競売(けいばい)にかけられ、その売却金が返済に充てられます。ですが売却金が、ローン残高に満たない場合もあります。
その場合は債務者が、残りの額(これを「残債」と呼びます)」を引き続き支払わなくてはなりません。
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担保の種類:物的担保と人的担保について
上でも触れましたが、担保は大きく2種類に分類されます。「物的担保」と「人的担保」の2つです。
ここでは、それぞれの特徴と相違点について見ていきます。
1.物的担保
「物的担保」とは、モノを担保にすることです。不動産や土地、株券や国債等の有価証券など、債務者が所有している財産が担保に当たります。
債権者は担保にする債務者の財産に対して、直接支配できる権利(=物権)を設定します。物権には様々ありますが、代表的な3種類を取り上げます。
この3つは、「担保をどの段階で債権者に渡すか」という観点で分類できます。借入の時点で担保を債権者に預けるのが「質権」です。
質権は担保となる財産を債務者自身が利用できないので、使い勝手はあまり良くありません。皆さんに馴染みの深い質権といえば、物を預けてお金を借りる「質屋」が挙げられるでしょう。
このほか質権には債権を担保にできる(=債権質)という特徴があり、債権質としての利用も多いです。担保となる財産は債務者の手元に留めておき、借金が返済できないと判明したら担保を処分できるのが「抵当権」です。
住宅ローンは抵当権の典型例です。ローン返済中も購入した住宅に住むことができますが、返済できなくなった場合は、住宅を手放さなくてはなりません。
民法第369条
1.抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
また担保の所有権は債務者にある質権に対し、予め所有権を債権者に渡しておき、債務の弁済が終わった時点で返してもらうタイプが「譲渡担保」です。質権のデメリットであった、「担保とした財産を自分で利用できない」という点をカバーしています。
2.人的担保
モノを担保とする物的担保に対して、人を担保とするのが「人的担保」です。債務者が返済できなくなった場合、契約で定めた第三者が代わりに借金を返済することを意味します。
人的担保では人だけでなく、法人も対象になります。人的担保の主な種類は、「保証」「連帯保証」「根保証」の3つです。
保証と連帯保証は、「催告の抗弁権」「検査の抗弁権」「分別の利益」が認められるかで区別されます。「催告の抗弁権」は、債務者がいきなり保証人に請求してきた場合、先に債務者本人に請求するよう求めることができる権利です。
また債務者に返済資力があることを保証人が証明できた場合に、債権者は債務者から先に取り立てをする必要があります 。この保証人の権利を、「検索の抗弁権」と呼びます。
さらに「分別の利益」では、保証人が複数人いた場合、返済額をその人数で割った金額だけ払えば、それ以上は払わなくて良いことになっています。保証人であればこれら3つの権利を主張することができますが、連帯保証人はできません。
このように、保証よりも連帯保証の方が責任は重くなります。
<外部の関連サイト>:保証人と連帯保証人の違いは?保証人になることのリスクは?
根保証について
根保証は、保証や連帯保証とは少し意味合いが違います。通常保証の場合、契約の段階で「〇〇年〇〇日の〇〇万円の債権」というように、債務が具体的に特定されます。
ですが根保証は特定の債務ではなく、一定の取引関係から生じる現在および未来の一切の債務を保証することを指します。限度額と契約期間こそ決まっていますが、債務者が将来保有する債務まで保証することになります。
限度額いっぱいの債務を保証させられる可能性が高いので、連帯保証よりも負担の重い契約になります。
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物的担保と人的担保の違いは?
一般的に、債権回収において確実性が高いのは物的担保です。人的担保でも連帯保証や根保証であれば問題ないように思えますが、返済能力の乏しい人が集まって連帯保証をした結果、実際は全く弁済できないというケースも多くあります。
もちろん物的担保でも自然災害や景気の動向によって、十分な債権を回収できない可能性はありますが、人的担保よりも信頼性は高いです。ただし注意点として、物的担保は回収限度額が担保の価値になります。
物件の担保価値が融資残高より低くなっても、それ以上を回収することはできません。人的担保の場合そうした限度はないので、融資残高に達するまで請求可能です。
しかし当然のことながら、保証人に返済能力がなければ請求の意味はなくなってしまいます。
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担保ローンのメリット・デメリットは?
債権者の貸し倒れリスクを保全するための担保ですが、債務者側にはどんな影響があるのでしょうか。ここでは、担保ローンのメリット・デメリットについて解説します。
メリット1: 審査に通過しやすくなる
一つ目のメリットは、ローン審査に通過しやすくなる点です。(金融機関など)貸主にとって、融資の一番の関心事は「無事に返済されるか」です。
借主に担保がない場合、借主の返済能力に対する見極めが貸主にとって、より重要になります。借主が事業法人ですと、事業基盤・事業の将来性・財務体質など多岐にわたる項目を、金融機関は精査する必要があります。
ですが借主が十分な担保(土地や、保証人となる別会社)を用意できるなら、金融機関も融資に応じやすくなります。
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メリット2 :低金利で高額融資が可能
担保がないと、貸主にとってリスクの高い融資になるため、その分だけリスク料として高い金利が設定されます。ところが担保を設定することで貸し倒れリスクは減るので、債権者は比較的安心して融資することができます。
そのため担保ローンの貸付条件は、債務者にとって好条件であることが多いです。無担保ローンに較べて、低金利で限度額も高めに設定されます。
完済すれば担保は解除されるので、長期間のローンでも安心して申し込むことができます。
デメリット1: 手続きに時間がかかる
担保ローンのデメリットの一点目は、手続きに時間がかかることが挙げられます。例えば不動産を担保にする場合、調査・鑑定・登記などプロセスがかなり複雑です。
住宅ローンの場合、申し込みから融資まで、1か月ほどは掛かります。手続きに時間がかかるだけでなく、様々な事務手数料も発生します。
デメリット2: 対象の資産を失うリスクがある
担保ローン利用中に返済不能に陥ると、家や土地など担保にしていた財産を処分されます。借入前は確実に返済できると思っていても、突然のリストラなど予期せぬ事態によって、返済不能になる可能性はあります。
人的担保の場合でも、保証人を務めた人との信頼関係を失うリスクがあります。トラブルになって縁が切れる可能性もあるので、軽い気持ちで保証人を頼んではいけません。
また保証人がいる状態で債務者が自己破産をした場合、借入残高の分だけ保証人が返済義務を負う事になります。場合によっては保証人まで自己破産に追い込むリスクがあることを、債務者は理解しておく必要があります。
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デメリット3: 設定できる担保に条件がある
先ほど見た通り一口に担保といっても、その対象範囲は広いです。ですが、どんな物(あるいは人)でも担保に出来る訳ではありません。
債務者が返済不能に陥った場合、債権者は担保から融資残高を回収するので、担保とする財産の価値は厳しく見られます。例えば不動産の場合、物件の現在価値・立地・権利関係・収支状況・物理的状況など、様々な観点から査定されます。
特に物的担保の場合、融資残高に満たないからといって、担保の価値以上の金額を回収することはできません。債権者としては財産価値の下落リスクも最小化したいので、長期的な視点でも厳しくチェックされます。
こうした事情は人的担保について同様で、安定収入や一定の資産がない人は(連帯)保証人にはなれません。
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無担保ローンのメリット・デメリットを解説
担保ローンに対して、担保がない借入を「無担保ローン」と言います。無担保ローンでは、申込者の信用を元に貸付が行われます。
担保がない分、融資額は少額で金利は高いローンが多いです。無担保ローンにはどのような種類があるのか、メリット・デメリットと合わせて見ていきます。
銀行カードローン・消費者金融
銀行や消費者金融のカードローンは、無担保・無保証の個人向けローン商品です。一度審査に通れば、契約額の範囲内で何度も借入ができます(=「極度借入」)。
審査スピードの速さが特徴で、消費者金融なら即日で借入が可能です。銀行カードローンでも、最短で翌営業日の借入が可能です。
ですが次に紹介するフリーローンよりも金利は高く、銀行カードローンなら15%、消費者金融なら18%が上限金利です。初回借入ではほとんどの場合、この上限金利が適用されます。
<関連記事>:銀行カードローンのデメリット(リスク)は?
銀行フリーローン
教育ローンや自動車ローンのような目的別ローンに対して、資金用途が原則自由なのが「フリーローン」です。フリーローンとは銀行が提供する、無保証の個人向けローン商品で、有担保と無担保の2タイプあります。
フリーローンは無担保でも上限金利(年率)を6~10%としている銀行が多く、カードローンやクレジットカードよりも金利水準が低いです。ちなみに有担保型のフリーローンを用意している金融機関もあり、その場合はさらに金利が低くなります。
ただしカードローンに較べて、フリーローンは審査が相当厳しいです。またカードローンとは異なり、一契約につき借入は一度だけという「証書貸付」の形態です。
カードローンよりも低金利だけど、気軽に利用できないのがフリーローンの特徴と言えるでしょう。
<関連記事>:おすすめのフリーローンを紹介します!
クレジットカードのキャッシング
クレジットカードのキャッシングは、契約額の範囲内であれば何度も借入できる点で、カードローンと似ています。普段買い物で使っているクレジットカードで、手軽に借入ができます。
難点としては、クレジットカードのショッピング利用とは別に、キャッシング用の審査があることです。このキャッシング審査は、ショッピング審査に較べて厳しいことで知られています。
さらに審査に1週間ほどかかるため、急ぎでお金を借りたい人には向いていません。またキャッシングの金利は、年率15~18%と高めです。
無担保ローンのメリット: 審査が早い
無担保ローンは、審査が比較的早いのがメリットです。登録手続きに時間がかかる担保がない分、用意すべき書類も少なくなります。
価値のある資産を持っていなくても誰でも申し込みができ、学生や専業主婦などでも利用できるローンもあります。ただし同じ無担保ローンでも、審査スピードの早さはローン商品によって違います。
カードローンは最短で翌営業日の利用が可能ですが、フリーローンは1週間ほど時間が掛かります。教育ローンも、審査期間は(最短3日ですが)1週間ほどを見た方がよいでしょう。
デメリット: 貸付条件がやや厳しめ
無担保ローンのデメリットとして、貸付条件の厳しさが挙げられます。たとえば担保ローンの代表格である住宅ローンの金利は、年率0.6~1%(10年固定)程度ですが、無担保ローン(カードローン)の場合は最大で18%と、ケタ違いに高くなります。
とはいえ同じ無担保ローンでも、目的別ローンは金利が多少低くなります。教育ローンなら年率2~5%、マイカーローンなら年率1~3%ほどです。
融資額も、担保ローンより低めに設定されています。万が一返済ができなくなった場合、担保ローンでは担保を処分することで融資残高を(多少でも)回収できますが、無担保ローンではこれができません。
最悪の場合、債務者が債務整理をする必要が出てくるので要注意です。
ここまで担保の基礎知識や、担保ローンについて見てきました。担保ローンは我々には縁遠いと考える人もいるかもしれませんが、住宅ローンなどは利用する人は大勢います。
担保ローンのメリット・デメリットを押さえた上で、賢く活用してください。
この記事のまとめ |
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