「根保証」(ねほしょう、と読みます)という言葉を、聞いたことはあるでしょうか?借入関係の用語ですが、一般の人には耳慣れた言葉ではないでしょう。
保証に関係ありそうですが、具体的にどんな内容なのでしょうか?今回は、根保証について分かりやすく解説します。
目次
根保証って要するに何?
保証とは、借入した人と同じ責任を負う
まず保証について、おさらいします。分かりやすくするために、ここでは借入の保証に話を限定します。
保証とは、借入をした人と同じ責任を負う状態のことです。同じ責任を負うということは、借入をした人が返済できない時に、代わって返済する義務を負います。こうした保証の義務を負う人を、「保証人」と呼びます。
なお保証人の重さに応じて、「通常保証人」と「連帯保証人」の二タイプに分けることができます。
詳しくは下記をお読みいただきたいのですが、連帯保証人の方がより重い責任を負う、とだけ覚えておいてください。
<外部の関連サイト>:保証人と連帯保証人の違いは?保証人になることのリスクは?
根保証とは、現在から将来発生する債務まで保証すること
根保証とは、一定の取引関係から生ずる現在および未来の一切の債務を保証することを指します。ただ、この説明だと少し分かりづらいですよね。
ですので特定保証と、根保証の違いという形で説明します。
<パターン1>
ここにAさんがいて、Bさんから10万円のお金を借りたいとします。ですがAさんは金欠気味のため、Bさんは貸したくありません。
ここでCさんが現れます。万一Aさんが10万円を返済できない場合、Cさんが10万円を代わりに払うとしましょう。
これなら、Bさんは安心して、Aさんに10万円を貸してくれます。ここでいうAさんは債務者、Bさんは債権者、Cさんが保証人ですね。
<パターン2>
パターン1と同じく、AさんはBさんから10万円借りるとします。ただしパターン1と違い、Aさんは10万円だけでなく、今後さらにBさんから借入する予定です。
借入ごとにCさんが保証を付けていたら面倒ですよね。そこでCさんは、AさんがBさんから借りる借入の全部に保証を付けます。
この場合も、Aさんは債務者、Bさんは債権者、Cさんが保証人ですね。パターン1もパターン2も、Cさんの保証という点では同じですが、その範囲が違います。
パターン1は、AさんのBさんからの借入の内、10万円だけ保証が付いてました。こうした、特定の取引にだけ保証がつく状態が、特定保証です。
一方でパターン2では、AさんのBさんからの借入全てに保証が付いてました。こうしたAさんとBさんとの間の、特定の取引関係の中で発生する、将来にわたっての全ての取引に保証が付く状態が、根保証となります。
まとめると、以下のようになります。
特定保証・・特定の債務に紐づいた保証
根保証・・・債務者の一切の債務を保証
<関連記事>:借用書の書き方を解説!法的に有効な(無効にならない)ためには?
極度額(限度額)の範囲内なら、全部保証する
根保証の特徴は、極度額(限度額)の範囲内なら、借入の全額を補償することです。通常の特定保証なら債務者の返済が進むにつれて借り入れも減り、それに合わせて保証額も減ります。
債務者が新たにした借入は、保証の対象外です(新規に保証契約を結ばない限り)。
一方の根保証は、債務者が一度返済して新たにした借入も、極度額の範囲内なら保証の対象です。借入ごとに個別に契約を結ぶ必要がある特定保証に較べて、一回の契約で済む根保証は、債権者からすれば便利な契約です。
<関連記事>:保証人なしで借金!お金を借りるための条件は?
個人は限定根保証のみ
根保証には、限定根保証と包括根保証の2種類があります。限定根保証とは、極度額や契約期間、取引内容などが特定されている契約を指します。
一方の包括根保証は、こうした取り決めの一切ない、かなり広い範囲の根保証になります。
このうち、個人で契約が認められているのは、限定根保証のみとなります。包括根保証が認められているのは、法人だけです。
恐らくこの記事を読まれている方は、圧倒的に個人の方が多いと思います。ですので、これ以降では個人を対象にした、限定根保証について詳しく説明します。
なお個人の根保証については、改正民法(2020年)により、根保証の範囲が厳しく制限されることになっています。詳しくは下記でご確認ください。
<外部の関連サイト>:保証に関する民法のルールが変わります | 法務省
個人が根保証の契約をする時の条件は?
保証人を保護するための対策
上の説明からも分かる通り、根保証は貸主にとって非常に有利な契約であり、保証人にとってかなり不利な契約です。個人が根保証で保証人になると、大きな負債を抱えることにもなりかねません。
こうした個人のリスクを抑える意味でも、2005年の民法改正で、根保証の契約には一定の保護条件が設けられました。
金銭に貸し借りに関連する根保証契約(「貸金等根保証契約」)について、以下で述べる条件を満たしてない場合、個人での契約が無効となります(民法第465条の2)。
民法第465条の2
1.一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2.貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3.第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
<外部の関連サイト>:包括根保証の禁止について | 中小企業庁事業環境部
契約は契約書で(口頭は不可)
根保証は保証人にとっても、重大な契約です。口頭で、軽々しく結ぶ種類の契約ではありません。
このため根保証の契約は、必ず書面で取り交わすことが必要です。仮に口頭で行った契約については、法的に無効とされています。
極度額を定める必要あり
先程見た通り、根保証はその極度額によっては、かなり大きな負債を背負わされることになります。そのため、極度額(限度額)の規定は特に大事です。
根保証の契約にあたっては、極度額を必ず書面で決める必要があります。極度額の記載がない契約については、法的に無効とされています。
<関連記事>:カードローンの上限の借入限度額は?
契約期間は最長でも5年
根保証契約の契約期限が、「元本確定期日」となります。元本確定期日とは、主たる債務の元本の確定すべき期日、と言う意味です。契約の最終日と考えると、分かりやすいかもしれません。
この元本確定期日は、つまり根保証の契約期間は契約日から最長でも5年とされています。これを超える契約は、法的に無効です。
仮に5年を過ぎたら契約は自動延長される、という取り決めを両者でしていたとしても、その契約は無効になります。
また契約期間の定めが契約書にない場合は、契約期間は3年とされています。契約終了後に契約を延長(更新)したい場合は、根保証契約を結び直す必要があります。
<関連記事>:元本確定期日とは?分かりやすく解説します!
元本確定事由(=これ以降は保証はしなくて良い)
契約期間中は、(極度額の範囲内で)一切の借り入れに保証義務が発生するのが、根保証契約の中身でした。ですが、あるイベントが発生した後の新規の借り入れについては、保証人は保証義務を負わないとされています。
このイベントを「元本確定事由」と言います。具体的には以下の場合が、元本確定事由に該当します。
・債務者または保証人が強制執行を申し立てられた時
・債務者または保証人の破産手続きが開始した時
・債務者または保証人が死亡した時
要するに、上の事例が発生した場合は、保証人はそれ以降の保証義務は免除されます。ただし、それ以前に発生している債務については保証義務を負うので、その点はご注意ください。
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個人が根保証の契約をするリスクは?
ここまで個人が、根保証の契約を結ぶ条件について見てきました。個人が過大な保証債務を負わないよう、法律で一定の保護がされているのは、上で見てきた通りです。
とはいえ、それでも個人の根保証契約には、相当なリスクがあると言わざるを得ません。この点について、以下で説明します。
極度額いっぱいまで保証させられるリスクあり
根保証契約での最悪のケースは、極度額の金額を保証させられることです。つまり根保証の契約を結ぶのであれば、極度額の債務を背負うことを、前もって覚悟しておくべきです。
債務者の借入は100万円だけど、500万円の根保証を求められたとします。いくら債務者が「100万円以上は絶対に借りない!」と言い張ったとしても、500万円の返済を迫られるケースを覚悟しておくべきです。
根保証の契約とは、それほど重い契約であることをご理解下さい。
<関連記事>:多重債務者とは?借金解決の方法は?
債務者の借入が保証人に通知されない
債務者の借入額の現状が分からないのも、根保証契約のリスクの一つです。債務者が債権者から借り入れをするにあたって、債権者も債務者も保証人に通知をする義務はありません。
つまり保証人は債務者の保証をしていながら、現在の借入額(=自分の保証額)さえ知らない場合があるのです。実際には債務者から教えてもらえる場合もあるでしょうが、こうしたリスクも頭に入れておくべきです。
<関連記事>:カードローンの保証会社って何?
せめて「特定保証」にすること
ここまで見てきて分かる通り、根保証契約は個人にとって相当リスクの高い(というか危険)です。できることならば個人が、こうした契約を負うべきではありません。
一歩間違えれば、自分や家族の人生を破滅させることになりかねません。「人の保証人には、絶対なるべきではない」といったアドバイスを、聞いたことある人もいるでしょう。
これは連帯保証人の話ですが、根保証の保証人はこれよりも更にリスクが高いのです。
とはいえ、これまでの恩義などもあり、損得抜きで保証人を引き受けなくてはいけない場面もあるかもしれません。筆者(=もぐお)は、保証人になることは絶対にオススメできません。
とはいえ、それでも保証人になる必要があるのなら、せめて特定保証での保証人になるべきです。将来発生する債務もカバーする根保証ではなく、特定の債務のみの保証人となるのです。
こうすれば根保証の場合に較べて、損失をある程度限定できるかもしれません。
とはいえ繰り返しになりますが、保証人にならない方が良いのが一番です。もしなるなら、保証した分を自分で返済する覚悟を持って、契約を結んでください。
<外部の関連サイト>:「経営者保証に関するガイドライン」の公表について
以上、根保証の内容や、個人が根保証の保証人になる時の条件を見てきました。借入の度に保証契約を結び直す必要がないという意味で、便利な契約ではあります。一方で保証人からすると、相当リスクが高い契約と言えます。
もし個人で根保証の保証人になるように求められた場合は、上の内容をよく読んで下さい。そもそも保証人にならないのが一番ですが、どうしてもという場合、特定保証に切り替えるよう、交渉して下さい。
この記事のまとめ |
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